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社会的価値の高い技術を開発し、より良い医療システムの構築へつなげる―吉木均

社会的価値の高い技術を開発し、より良い医療システムの構築へつなげる―吉木均

吉木均さん
Hitoshi Yoshiki

ジョンソン?エンド?ジョンソン株式会社
メディカル カンパニー/博士(工学)

研究とビジネス、両方の知見を生かして医療機器のさらなる発展に挑む

新たな発明がもたらす社会の姿を思い描き、機械工学と医療を組み合わせた技術の開発に挑んできた吉木均さん。研究に没頭した大学時代から、医療機器に携わる現在まで、その軌跡を振り返る。

ロボット技術がつくる未来に憧れ、研究に明け暮れた大学時代

ロボット技術に関心を持ったのは中学3年生の頃です。当時、二足歩行する人型ロボットASIMOの開発者が「鉄腕アトムのようなロボットを作りたかった」と語るのをTVで見ました。子供の頃は想像の産物であっても、大人になる頃には誰かが似たようなものを実現するのだと気付き、自分も夢のある技術を生み出そうと決意。『鋼の錬金術師』という漫画が好きだったこともあり、高校の頃には人間の身体と機械を融合するサイボーグ技術に強い興味を持つようになりました。

高校卒業後は、機械工学を軸に医学を学べる環境を探し、四大学連合?医用工学コースを履修できる東工大へ進学。医学工学コースでは東京医科歯科大学の講義も受講しながら、有機?無機材料や生物、電気通信、生体情報、生理学、整形外科学など、医療と機械をつなぐ幅広い分野を学びました。多様な知の体系に触れたことで、1つの専門にとらわれない、俯瞰的な視点が得られたと感じます。

3年次からはサイボーグ技術の研究を本格化するため、さまざまな研究室の先生方を捕まえて、大まかな研究構想を説明し、今後の進路を相談しました。その中のある先生の言葉に、私はハッとさせられました。「進んでサイボーグになりたがる人などいないし、いたとしてもその家族は嫌がるし止めるだろう。人間を見ず、自分の作り
たい技術を押し付けるのは技術者としてあるべき姿ではない」。当時は夢を否定されたようでショックでしたが、電信しかり飛行機しかり、どのような技術革新も人間社会が受容して初めて発展したものであり、人に必要とされないものは後世に残せないのだと痛感しました。

そこで、人体そのものの融合を目指すサイボーグより早く社会に受容され、医療を発展させるであろう手術ロボットの開発に携わろうと発想を転換。大学院では、社会実装を視野に入れた手術ロボットシステムの研究活動に取り組む只野先生の研究室に所属しました。折しも所属した2013年は、只野先生と当時東京医科歯科大学に移籍された川嶋先生とが大学発ベンチャー、リバーフィールド株式会社の創業にむけ動き出したタイミングでした。黎明期に近くで研究できたことは、社会実装のダイナミズムと、市場と向き合い技術を実用化する難しさを肌で感じられる貴重な経験でした。私自身は医師へのヒアリングから課題を見出し、電気メス、超音波メスといった手術用エネルギーデバイスの新たな機序を発明し、ロボットへの搭載を目指し研究開発に注力。前人未踏の分野だったため文献が少なく苦労しましたが、新たな医療機器の可能性を実証できた瞬間の喜びはひとしおでした。何より、自分が構想したものを追求し、実現までの計画?実行も自由にできるのは博士後期課程の研究ならではで、忙しくも充実した日々を過ごせました。とはいえ、後述のグローバルリーダー教育院も含め、フラフラといろいろなことに手を出す私を温かく支援?指導してくださった只野先生の器量によるところも大きく、感謝してもしきれません。

技術を実用化するため、学内外のプログラムでビジネスに生きるスキルを習得

研究成果を社会で役立てようとする只野先生らの活動に感銘を受け、私自身もビジネスに必要なスキルを学ぼうと、グローバルリーダー教育院にも所属しました。このプログラムでは、企業?識者からの問題提起を受けて、専門分野や所属の異なる学生同士で討論を行い、解決策を探るプロジェクトが常に企画されています。バックグラウンドの異なる人々と協働するのは大変でしたが、学士課程時代に培った多彩な分野の知識を生かしながら、さまざまな環境下でどのようにリーダーシップを発揮すべきか、体験的に学ぶことができました。一方で独りよがりな考えに陥りやすいという性格に気付き、他者を巻き込んで物事を成し遂げることの重要性を実感。自分の長所?短所をはっきりと自覚し、改善策を見出せたことは、このプログラムで得た大きな収穫です。

さらにリーダーシップについての学びを深めつつ、グローバルな環境でも発揮できるスキルを磨くため、海外研修にも参加しました。ハーバード大学ロースクールのProgram on Negotiation(交渉学プログラム)にも挑戦。意思決定が求められる場面の種類や実例を学ぶとともに、コースワークにも取り組み、価値創造につながる、より広義の交渉力を養いました。また、スタンフォード大学のInnovation Masters Seriesで、前例のない課題を解決し、新たな製品?サービスを生み出す手法として注目される「デザイン思考」を学習。本場で知識を深めるだけでなく、大学院が企業の課題をもとに研究を行い、その成果に対して報酬を得るというビジネスモデルを目の当たりにして、大きな刺激を受けました。

こうした学びの数々を経て、博士後期課程1年次には世界各国で医療機器?サービスを扱うグローバル企業のインターンシップに参加。新規事業の開発担当として、新たな顧客のニーズを洗い出し、事業モデルを構築しました。一連の活動で身にしみて感じたのが、ステークホルダーに将来の計画を伝えて説得し、人や資金といったリソースを確保することの大切さ。研究とビジネス、どちらにおいてもこの視点が不可欠だという気付きは、その後の人生の選択に大きな影響を与えています。

医療業界の最先端に立ち続け、工学と医療に携わるという夢を実現

大学院卒業後は、医療機器メーカーや製薬会社の戦略策定に特化したコンサルティング会社に入社しました。グローバルなヘルスケアビジネスの主要なプレイヤーとともに、事業の将来を構想する仕事ができる環境は非常に刺激的でした。入社前に「今後必ず手術ロボットの需要が高まるので、その最前線に立たせてほしい」と伝えていたこともあって、医療機器に関する仕事を数多く経験。4年目には日本国内の医療機器案件をリードする役割を担いはじめていました。

転機が訪れたのは2021年。ジョンソン?エンド?ジョンソン株式会社メディカル カンパニーに転職しました。当時の仕事にやりがいを感じていたため悩みましたが、十年来の夢が叶うチャンスと捉えて熟考の末に転職を決意しました。現在は、整形外科領域におけるデジタル関連製品の事業戦略の策定や国内外のステークホルダーとの協議など、幅広い活動に取り組んでいます。同職には整形外科での臨床経験やコンピューター支援手術(CAS:Computer Assisted Surgery)機器の知見を持つ社員がおり、戦略立案やグローバルな折衝を強みとする私とタッグを結成。各々の個性を生かして、日々の業務にあたっています。

今日に至るまで何度も重要な選択をしてきましたが、「工学と医療を組み合わせて、社会の役に立つものを生む」という根本的な姿勢は変わっていません。現在の目標は、事業として掲げているDigital Surgery構想を発展させ、医師が持つ臨床価値を最大限に発揮できる環境をつくること。基本的な医療サービスを医療機器がもっと担うことができれば、医師の働き方改革にも貢献できるはずです。素晴らしい未来の実現へ向けて、これからも技術の力を信じて挑戦を続けていきます。

吉木さんのキャリアパス

  • 2010
    東京工業大学 工学部 機械知能システム学科所属
    四大学連合 医用工学コースにて東京医科歯科大学へも通学
  • 2012
    サイボーグ技術の開発について教員から指摘を受け、方針を転換
    手術ロボット分野での社会貢献を目指す
  • 2013
    東京工業大学大学院 総合理工学研究科
    メカノマイクロ工学専攻 只野研究室所属 同グローバル教育院所属
    ハーバード大学ロースクール Program on Negotiation(交渉学プログラム)
    スタンフォード大学 Innovation Masters Series参加
  • 2017
    博士後期課程修了後、コンサルティング会社 入社
    医療機器?製薬分野の事業戦略策定に従事
  • 2021
    ジョンソン?エンド?ジョンソン株式会社入社
    整形外科領域におけるデジタル関連製品のプロダクトマネージャーに着任

吉木 均

吉木 均
よしき ひとし

Profile

2013年、東京工業大学工学部機械知能システム学科を卒業し、四大学連合の医用工学コースを修了。同大学院総合理工学研究科メカノマイクロ工学専攻へ進み、グローバルリーダー教育院にも所属。2017年、同博士後期課程、グローバルリーダー教育院を修了コンサルティング会社での勤務を経て、現在はジョンソン?エンド?ジョンソン株式会社メディカル カンパニーで整形外科領域製品のプロダクトマネージャーを務める。

Tech Tech ~テクテク~

本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 40号(2022年3月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。

SPECIAL TOPICS

スペシャルトピックスでは本学の教育研究の取組や人物、ニュース、イベントなど旬な話題を定期的な読み物としてピックアップしています。SPECIAL TOPICS GALLERY から過去のすべての記事をご覧いただけます。

(取材日:2021年12月15日/ジョンソン?エンド?ジョンソン インスティテュート 東京にて)

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp